「地域で出逢う医療人たちとの連携、協働、そして友情のなかにケアマネジメントのさらなる可能性を見る。僕が感動した医療・介護連携エピソード集」

著者:村瀬崇人

「コミュニティセラピスト」後藤千沙都(理学療法士)

よく通る大きな声の持ち主。動きには躍動感がある。少し前になじみのステーションから「新人」と紹介された彼女は、さわやかな印象の理学療法士だった。

先月に無事、介護予防プランを終了し、「住み慣れた地域での普通の暮らし」に戻っていった利用者が、彼女の掛け声に乗って楽しそうに体を動かす姿を、僕は窓の外から確認する。元気そうだ。ここはデイサービスでも通所リハビリテーションでもない。地域の中にある体操教室だ。

利用者は、いずれも軽症ではあったが、過去に三度、脳梗塞を繰り返していた。左上下肢に軽い麻痺が残っている。元来、真面目な性格だが、少しうっかりすることも増えたらしい。退院に備えて介護保険の申請が必要と病院に促された妻が「何も分かりませんが」と地域包括支援センターに訪れたという。

要支援2。近くの公園にグランドゴルフを楽しむ仲間がいる。地図の上では、1kmもない。僕にとってはよく見知った土地だ。ほぼほぼ平坦な道のりだが、ところどころ、バリアーになる階段がある。

病院のナースやセラピストが見守る中、簡単に動作確認を行う。事前に見ておいた自宅の環境と照らし合わせ、基本的な環境整備についてはその場でまとまった。

「今すぐには無理でも、やがては仲間たちのところへ戻りたい」

利用者がはっきりとそう言ってくれたので、僕も決断がしやすかった。

―今回は、出来るだけ短いお付き合いで済むようにしましょう。ズバリ、3か月で。

後々に福祉用具貸与を残さなくて済むよう住宅改修案をつくった。退院初期だけ、訪問リハビリテーションを行って屋内での基本的な日常生活動作の確認と定着、すぐに屋外歩行練習に入る。仲間がいるという公園まで約800m、スーパー、コンビニは500m以内、かかりつけ医のクリニックが少し遠く1kmともう少し。ただ、月に1、2度の通院なら家族の援助が見込める。目標はシンプルだった。

「新人」の明るい雰囲気がこの利用者によくマッチした。はるかに年の若い女性を利用者が喜んで「先生」と呼ぶ。照れる理学療法士との関係を見ていると僕も少し口元が緩む。

順調に体調を回復した利用者は、本当に生真面目な人だったのだろう。約束の期間、3か月きっちりで仲間たちの待つ公園に戻っていった。

定期的な運動と地域とのつながりは保ちたい。近くでやっている百歳体操には早々に案内しておいた。クリニックにはケアプランの終了を伝える。何かあったら連絡くださいと。

最後のモニタリング。僕は、「先生」との別れを惜しむ利用者に伝えた。

ここに行ってみて、また彼女に会えるから、と。

専門職が地域に暮らす人たちをさりげなく見守る通いの場が、地域の活力の中で自然と生まれてくる。ガラス張りで開放的な雰囲気のとある訪問看護ステーションのオフィスは、週に1度、彼女の大きな声がよく響く、賑やかな体操教室に変わる。


著者:村瀬崇人
主任介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士
まごころステーションすくらむ 代表